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たとえどんな些細な嘘であっても2012-02-24

可南さらさ「君が眠りにつくまで」(「移り香」の番外編同人誌2)を読む。

/陵クミコ

この話は今後出る予定の「移り香2」に入りきらないだろう
エピソードだということで…続編に益々期待度UP


………
逢瀬の為に清司の家を訪れた要と顔をあわせたのは、
いまやアイドルとして活躍し始めているメグだった。
肝心の清司は急な仕事の為に海外へ出かけた後だと言う。
メグの探し物につき合うことにした要は、
今まで立ち入りを禁じられていた小部屋へと足を踏み入れるが…。


相変わらずの二人。
要は恋人としてだけでなく、実兄としても清司を慮り、
清司は痛く切ないほどの恋慕を兄に抱いている。
それは日々枚数を増やしていく要の写真に、如実に現れている。
清司は不遜な態度も相変わらずだし、
仕事も順調そうな生活の日々を送っているが、
いつか訪れるだろう、兄の手を放す日を危惧する内心は変わらないままで……
簡単に真の心情は吐露しない。

続編が執筆中であることから判ってはいるが、
現状のままでは清司の安寧は訪れることは無い。
読者としては、コレから先は読むのが辛い話だとは思うんだけどね〜…
この二人の行方が気になってしかたがなく…
幸せになってくれることを願うしかない。
二人の関係に何が投げ込まれるのか。続編の刊行が待ち遠しい。


今年中には「移り香」続刊が、という話に期待しつつ…、
まずは2月末に刊行決定の(粗筋も表紙も出たから確実!)
ガッシュ文庫「セカンド・ラブ」を心待ちにしている。
その次には「その声で囁くな」か?いずれにせよ「ちゃんと待ってる」から!

後ろ暗い充足感2011-07-06

可南さらさ「キスマーク」(「移り香」の番外編同人誌)を読む。


こちらは本編の「移り香」発行の前(2008)に出ていたそうで、
今回の本編発行に合わせて再販されたとのこと。
あとがきが差し替えられているようだ。

表紙は…、陵クミコの幻のメガネの要だー!
メガネ萌えの私にとっては…ふ、いいわぁw
でもそれ以上にイイのは、タイトルページ(標題紙)の小さなカット。
要の肩口に頭をのせた清司が壮絶に色っぽい。くるー!


「キスマーク」は清司視点。

カメラマンの清司(せいじ)は、ここのところあまり機嫌が良くない。
お互いに多忙すぎて、実兄であり最愛の恋人、要(かなめ)との
逢瀬の時間が思う様にとれないからだ。

そんな折、久しぶりに要の来訪に喜ぶ清司だったが、
要が部屋に仕事を持ち込み、用意した食事も後回しにする態度に拗ね、
ついつい意地の悪い言動をしてしまい、要を激怒させてしまう…。

数日後、ふたりの仲を知るモデルのメグから、
要と一緒にランチに行った際、自分の写真集を買ってくれたお礼に
サインと「キスマーク」をつけてあげた事を聞いた清司は、
憤り動揺して要の家に駆けつける……。


……
清司、いっそう要にメロメロダメダメになってるw
現在のふたりの関係は、勿論「恋人同士」なんだけど、
基本の基本、兄弟という間柄はどうしても変わる事は無い。
それ故ふたりの会話も兄、弟の立場で物を言い、ふるまう部分も多々あり…。
それがとても複雑で面白かったりする。

弟=年下攻めなんだけど、清司の甘え方もそんな部分が出ていて、
一見不遜な態度なのになんだか可愛い。
独占欲、所有物の証である「キスマーク」。(主に男性がつけるそうだ)
いってみればただの皮膚の内出血であるキスマークごときに、
清司の心情は乱れまくり、振り回される。
うーん、態度は強引だし勝手なんだけど、やっぱり可愛い。
結果的には、要が清司を甘やかし過ぎるのも仕方が無いと思える。


対外的には、実力も勢いもあるカメラマンで、
社会的にも評価も高く、見目麗しく、クールで要領もよく立ち回る。
対「要」的には、情熱的で強引ながら、脆い宝物を扱う様に接したりする。
そういう部分が表面…行動に思いっきり出ていながら、
その実、内面では…

この兄を犯して死ねといわれたら、それで死んでもいいと考えていた
背徳的な関係に、罪悪感だけでなくほの暗い満足感を感じている

のが、清司だ。
この辺…、普通の恋愛では考えもしないような思考をしてしまったり、
不必要なほどの葛藤を繰り返したりしてしまうんだろうなー、と感じてしまう。
後ろ暗い充足感、ほの暗い満足感って…人の心の機微って単純でないのな。

一生手放す事の出来ない「禁忌」を抱えてる明暗の恋心が、
「移り香」とその続編の読みどころだと思う。



もう一本、より以前に書かれたのが「残り香」
時系列的にも本編直後ら辺か。こちらは要視点。


……
こちらの話も、多忙で逢瀬の時間も取れないことに不満を持つ清司に、
要が朝から好き勝手に弄られてしまう話。(元も子もない説明文w)

付き合い始めは特に、共有する時間が相互理解を深めるのだよね。
でも、ふたりは元々兄弟だというところがあって、
その辺吹っ飛ばし気味というか…照れがあるのか、
なかなか甘々な雰囲気にならないのか…。

それでも清司を心情的に不安にさせたくないあまり、
朝から情事に興じてしまう…というか流されてしまう要が優しい。
心情的にはお互いにどっぷり堕ちているので、心配は要らないようだがね。


とはいいつつ…。
物語には波乱が付き物だから、続編ではどんな展開が待っているのやら。
読むのが楽しみなんだけど、辛い展開予想に早くも切なくなったりしてしまう。
要の清司への思いがあれからどう変化していくのか、
その辺が丁寧に描かれているといい。

「……そういう、まっすぐなところ」2011-06-21

先日の すっげービックリしたこと で 書いてた
可南さらさ「左隣にいるひと」
小説Chara vol.24(徳間書店)

作者も言われてたが「地味」だけど、いい話だった。
大好物の「純愛」だしね。不快感、ゼロ!


中高生時代、いつも隣にいたふたり。
だが卒業を迎える頃、些細なことでケンカをしたことを境に、
5年間、お互いに連絡も取り合わないでいた。

社会人になった江沢(えざわ)は、早めの夏休み消化のため、
ひさしぶりに帰省する。
月明かりのなか、駅に迎えに来てくれたのは
そのかつての親友、生方(うぶかた)だった。

5年ぶりのふたりの再会は、謝罪、仲直りという以上の意味を持ち始める。


あくまでも普通の男、江沢。
非常にまともで、真面目で、まっすぐな性格。いわゆる好青年。
BLのキャラとしては他に形容が無いほどストレートだ。

一方、お人好しすぎて優しすぎる天然王子、生方。
不幸な家庭環境にもひねる事無く育ち、誠実で心優しい性格で、
周囲の癒し系だった。
 
10年来、心に秘めた思いを抱えていたのは、生方だ。
彼は優しすぎるが故、恋しい人と5年も接触を持たない。
何故なら……


……
少し困った様な笑顔で、生方は江沢に告白をする。
それは、長年抱えてきた自分の思いにけじめをつける為だけであって、
相手に受け入れてもらえるなんて、ほとんど思っていない。
相手を困らせる様な事態は望んでいない彼。
謙虚な、真摯な姿勢がとても好ましく思える。

そんな生方を江沢は真正面から受けとめ、理解しようとし、受け入れる。
そんな江沢の、まっすぐで男らしいところがとても良い。
あくまでも普通の男、江沢。それでも惚れる価値のある男だな。

江沢の「……そういう、まっすぐなところ」が
ずっと好きだったという生方。いや他にも好きなところがありすぎて、
逆に嫌なところはないそうだw なんて可愛い…。
健気な受…あれ?
生方は受じゃなくて攻??だな。健気な攻かー。はは、いいなーw
江沢も積極的な部分もあるから、色々試行錯誤ありそうだけど。
単行本化の際には是非、その辺の二人が読みたい。

いつまでも
お互いの右隣左隣には「彼ら」がいますように。


……
BLで、片恋する方のキャラに感情移入が出来、その恋愛相手にも
自然と好感が持ててしまうのが、良く出来た話…良作だと思っている。

可南さらさはそのあたり、とても上手だとおもう。
奇抜なキャラ設定も、詳細すぎる業界BG設定も無いのだけれど、
読了後、とてもいい気持ちにさせてくれるんだよなー。

挿絵は木下けい子。
もうあまりにぴったりな人選で、この作品がコミカライズされるとしたら、
この方以外には全く考えられん。ベストでしょ。

逆に、木下作品のノベライズだったら可南さらさがいいかもねw

「移り香」は弟との…2011-06-15

可南さらさの「移り香」を読む。



先日購入した「シャレード 2006 11月号 」に
前編が掲載されててちょっと気になったこの作品。
実に気になる部分で次号に続く、だったので、
なんとなく心にもやもやした作品だった。
個人的にはタイミング良く単行本化されてLucky。

挿絵は同じ陵クミコだけど書き下ろされてる。
個人的には前編に掲載されてた二人の横顔の表紙も、
清司が要の腕を舐めてる絵も好きだったので、
ちょっと残念な気もする。要、メガネだし!


我ながらBLの好みはノーマルっていうか、(なんか変w)
純愛路線に弱いのは、今までの記事で何度も書いてるけど、
100%兄弟モノは初めてピンで購入した。

幼なじみや同級生とか、
縦関係(先輩後輩)とか、
同僚とか、仕事関係先とか、
普通に街で知り合った人同士とか。

今まで好んで読んだBLタイプは、
恋人同士になるには禁忌の無いカップルモノ。

100%兄弟モノ、は
コブタ4人(男女込み)持ちの私には、
なかなか心情的に受け入れがたい設定だ。

そんな手近で手を打つなよ、と
もっと視野を広く持てよ、とどうしても思ってしまうよ。

従兄弟ならまだどうにか許容範囲内、なんだけど。
実親子は全くダメ。アレはどうみても性的虐待。鬼畜。


「移り香」では
実の兄に対して、
弟が兄弟愛以上の感情を持ってしまっている。

両親が早くに亡くなり、
それまで親交の無かった祖父母の元で育った兄弟。
親身になってくれる周囲の人も少なく、
物質的には裕福に、しかし心情面では心許なく、
それぞれ屈折した思いを抱えて成長する。

特に重大で過酷なトラウマも無いのに、
ごく自然に実兄を愛してしまっている弟。
弟の切ない思いに、兄は長い間気がつく事は無かった。
何故か自分から距離を置く様になった弟に、
兄は悲しい思いを持ちながらも、ただ憤るだけで、
双方の溝は深まるばかりの時間が続く。

兄が家業を継ぐ事のトラブルから、
兄弟は2年ぶりに関わり合いを持つ事になり、
二人の運命は新たな展開をみせる。


………
この兄、要(かなめ)はほんとに要領が悪いっていうか、
生真面目っていうか…可愛いのだ。
対外用の能面のような堅さが取れた素顔は、
確かに手助けしたくなるような、放っておけないキャラ。

そして弟、清司(せいじ)は生活力のあるカメラマンとして、
要とは正反対の性格で描かれている。
自分で自分の道を切り開き、思い通りに生きている。
決して報われる事の無い、恋心を大切に心に秘めて…。

鈍く寛大な兄、要。
不遜に見えてセンシティブな弟、清司。

「移り香」は弟との優しい記憶。


終盤、要は兄の慈愛と労りで清司を体で受け入れる。
ここでは要本人も兄弟間の禁忌をほとんど感じていない。
要は、兄弟愛の延長線上で、
最愛の弟である清司を、
最大限に癒すために抱き合う。
勿論、その行為は自分自身をも癒すためのものでもあった。
彼がさほど禁忌を感じていないのはその為なんだろうか。

兄が弟を受け入れ、ほどなく本編終了。
うぅ清司、とりあえず良かったね。
それにしても…少し中途半端な気が…。
ああ、でもこれからゆっくり幸せになるんだよね、きっと。

と感じたところで続編。
本編は要視点なんだけど、続編のショートは清司視点。
この「stand by me」は非常に切ない。

この手に転がり落ちて来た幸せは、
本来あり得るべきものではない過ちの産物だと、
どうしても感じてしまう清司。
いつかは離れていってしまうであろう兄を
自分は奇麗に手放す事が出来るのか考えあぐねている。

葛藤に次ぐ、葛藤。
最愛の人を手に入れたと思っても、
今以上の幸せはあるのかと、欲張って良いのかと、
自問自答し、葛藤してしまうことは際限なく続く。

…清司、切ないよー。
彼が、手放しで幸福感を味わえる日が来るのを
読者としては願わずにはいられんよ。


この続き、
要の気持ちが、
今はあえかな恋心がどうなるのかは、
待て続編!との事なので、とても楽しみしている。
なるべく早く発行して欲しいな。

その際にはどうか、どうか、同人誌で発表されてるという、
ラブラブ番外編も収録されますように。

そして、
あの麗しい表紙が一枚絵になることを希望するぞ。